日本茶の種類

お茶にはさまざまな種類があります。すべてのお茶は「チャ」という木の葉から作られますが、製法や素材によって分類することができます。

まず、以下の3つに大別することができます。

  1. 不発酵茶:生の茶葉を加熱することで酵素の働きを止めたお茶。
  2. 半発酵茶:少し酸化酵素を働かせた後に加熱し、酵素の働きを止めたお茶。
  3. 発酵茶:酸化酵素を最大限に働かせた後に加熱し、酵素の働きを止めたお茶。

以下に日本茶の種類についていくつか紹介します。

煎茶

「煎茶」は江戸時代中期に製法が編み出され、日本茶が地域産業として発展するきっかけとなりました。静岡県や鹿児島県をはじめ、全国の茶産地で生産されています。

煎茶には「深蒸し煎茶」という種類もあり、他の煎茶と区別するために「普通(蒸し)煎茶」とも呼ばれます。普通の蒸し煎茶と深蒸し煎茶の違いは、蒸す時間の長さです。普通の蒸し茶は30~40秒と、深蒸し茶の2~3倍短い蒸し時間が特徴です。

煎茶の茶葉は深い緑色で、お茶にすると黄緑色になります。甘味、渋味、苦味、うま味のバランスがとれた味と爽やかな香りが特徴です。

深蒸し煎茶

「深蒸し煎茶」は煎茶の蒸し時間を2~3倍に延ばしたものです。蒸し時間が長いため渋みや苦みが少なく、まろやかな味わいになります。また、蒸し時間が長いため、通常の煎茶よりも茶葉が細かく粉状になることが多いです。

深蒸し煎茶の味は濃厚でまろやかですが、茶葉が細かくなるためやや濁ります。普通の煎茶と同様に、日本全国で生産されています。長時間蒸した茶葉を「特蒸し茶」と呼ぶこともあります。

玉露

玉露」は日本茶の中でもトップクラスのうまみと甘みを併せ持つお茶です。他の日本茶のように喉を潤すためではなく、独特の香りと味を楽しむために飲まれることが多いです。

製法自体は一般的な煎茶と同じですが、茶畑全体を覆って20日ほど日光を遮り、有機肥料をふんだんに使った自然栽培の新芽を手摘みします。このため、色や味が煎茶とは異なる特徴があります。

玉露の代表的な産地としては、三重県京都府の宇治、福岡県の八女などが挙げられます。

かぶせ茶

「かぶせ茶」は煎茶の渋みと玉露のうまみを併せ持つ、少し特殊なお茶です。

被覆期間は、玉露では20日前後ですが、かぶせ茶は1週間から10日ほどのため、煎茶の爽やかな香りと渋みがありながら、玉露のうま味も残り、渋みが出ないといった特徴があります。

かぶせ茶は淹れる方法によっても味わいが変わるのも特徴的です。 ぬるめのお湯でじっくり時間をかけて淹れると玉露のような上品でまろやかなうま味が、少し熱めのお湯で淹れると渋みが引き出され、煎茶のようなすっきりとした味わいになります。

かぶせ茶の代表的な産地は三重県で、出荷量も第1位となっています。

釜炒り茶

一般的な茶葉の製法では、蒸して作るのが一般的ですが、「釜炒り茶」はその名の通り、茶葉を釜で炒って発酵を止めます。煎茶の場合、製茶工程の最後に茶葉の形を整える「精揉(せいじゅう)」という工程がありますが、釜炒り茶の場合はこの工程がないため、茶葉はまっすぐではなく、丸まった形になります。

そのため、釜炒り茶は「釜炒り製玉緑茶」とも呼ばれます。この製法は16世紀頃に中国から伝わり、現在でも親しまれています。

釜炒り茶の最大の特徴は、その淡い黄色だけでなく、香りにもあります。焙煎の過程で茶葉の青臭さが消え、香ばしい「釜香(かまか)」とすっきりとした味わいが生まれます。

釜炒り茶の主な産地は九州地方で、宮崎県の高千穂、佐賀県の嬉野などが有名です。

蒸し製玉緑茶

釜炒り茶の製造工程で説明したように、煎茶などの場合、茶葉をまっすぐにする「精揉(せいじゅう)」という最終工程がありますが、その工程を行わない蒸し製の茶葉を「蒸し製玉緑茶」と呼びます。茶葉が玉のような形をしていることから「グリ茶」とも呼ばれます。

蒸し製玉緑茶の誕生は、大正末期にさかのぼります。当時、ロシアでは中国産の釜炒り茶が主流で、日本でもロシアに輸出するために開発を始めたのがきっかけでした。その開発の過程で、煎茶の機械を使って、釜炒り茶に似せたお茶を作るようになり、このお茶が完成しました。

蒸し製玉緑茶は、釜炒り茶よりもやや緑色が強く、黄緑色をしています。通常の煎茶よりも渋みが少なく、まろやかな味わいが特徴です。

現在、九州地方と静岡県の一部で生産されています。

抹茶

「抹茶」は「碾茶(てんちゃ)」と呼ばれる茶葉から作られ、この名で呼ばれることもあります。碾茶玉露と同様、茶畑を藁で覆って栽培されます。茶葉は手で摘み取られ、蒸された後、細かい茎や葉脈を取り除くために揉まずに乾燥されます。この状態の茶葉を「碾茶(てんちゃ)」と呼び、さらに茶臼で細かく挽いて「抹茶」にします。

お湯を使って茶葉から旨味や香りを抽出する方法とは異なり、抹茶は粉末そのものをお湯に溶かして飲むことで、お茶の栄養を丸ごと吸収させることができます。茶筅(ちゃせん)で茶葉を泡立てることで、舌触りがクリーミーになり、渋みの中にも上品なうま味が凝縮された味わいになります。

このお茶本来の渋みが甘みを引き立てるため、最近ではお菓子の材料や香りづけとしても使われることも多くなっています。

有名な抹茶の産地としては、京都府の宇治や愛知県の西尾、福岡県の八女などがあります。

茎茶

日本茶の製造工程では、茶園から摘み取った生葉を蒸したり炒ったりして発酵を防ぎます。それから製造工程を分け、それぞれのお茶を作ります。

第一段階の茶葉は「荒茶」と呼ばれますが、茶葉をそのままにしておくと、茶葉の品質が悪くなり、味も悪くなります。不要になった部分を「出物(でもの)」と呼び、茎の部分を摘み取って集めて「茎茶」にします。地域によっては「白折(しらおれ)」とも呼ばれます。

また、茶葉を摘む前から特別な方法で栽培された玉露の茶葉から取れる茎は「雁が音(かりがね)」とも呼ばれ、最近では良質な茎茶の別称となっています。

茎茶は渋みよりもすっきりとした甘みが強く、さわやかな香りが特徴です。日本茶の製法で作られるため、どこの茶園でも作ることができますが、石川県金沢市では「棒茶」と呼ばれる焙じた茎茶が有名です。

芽茶

「芽茶」も出物をふるいにかけたものです。その名の通り、新芽から作られます。

「芽」という名前から、新芽を摘み取ったものと思われるかもしれませんが、茶葉に成長しない細かい芽がたくさん含まれていることから、この名がついています。

茶葉よりも小さいため、蒸らす時間があまり必要ありませんし、高温で素早く淹れることができます。また、煎茶などは2~3回煎じることが一般的ですが、芽茶は葉が完全に開ききるまで何度も淹れることができます。

芽が成長途中なので旨みが凝縮され、渋みと香りが豊かなお茶になります。

粉茶

粉茶も茎茶や芽茶と同様、出物から作られます。出物から茎や芽先を取り除いた後に残った細かい葉から作られます。

小さいため蒸らす工程が不要で、急須を使わなくても茶こしにお湯を注ぐだけで簡単に淹れることができます。

粉末茶は主に寿司屋の〆に出される「あがり」や、ティーバッグの中身として使われることがあります。

ほうじ茶

「ほうじ茶」はその名の通り、茶葉を褐色になるまで焙じたお茶です。茶葉を褐色に焙煎することで、茶葉の色が褐色になり、何より香ばしい香りが特徴です。

茶葉の水分がなくなるまで焙煎することで、さまざまな成分が減少し、渋みや苦味も抑えられて刺激が少なくなります。そのため胃腸に優しく、消化器官が未熟な子供や、負担のかかりやすい高齢者におすすめのお茶です。また、さっぱりとした味わいで素材の味を邪魔しないため、食事中のお茶としても選ばれています。

以上のように、飲みやすく親しみやすいお茶ですが、お茶本来の風味を抑えることが前提となっているため、番茶や下級煎茶、茎茶など、ややランクの低いお茶を使用するのが一般的です。わざわざほうじ茶の茶葉を買わなくても、フライパンやホットプレート、オーブントースターなどを使って自分で簡単に作ることもできるのもほうじ茶の魅力です。

玄米茶

ほうじ茶だけでなく、「玄米茶」も香ばしい香りが特徴です。なぜこのような香ばしい香りが出るかというと、玄米茶の場合、茶葉を炒るのではなく、炒った米をブレンドしているからです。

茶葉と炒り米の割合は基本的に1:1ですが、茶園や店によってブレンドの割合が異なり、さまざまな変化をもたらします。割合だけに限らず、一般的によく使われる番茶をはじめ、煎茶や深蒸し煎茶、抹茶をベースにするなど、バリエーションは豊富です。

「玄米茶」という名前から、炒り米は玄米だけを使うように思われがちですが、そうではありません。茶葉と炒り米のブレンドであれば玄米茶に分類されます。

番茶

茶葉は、摘み取る順番に応じて「一番茶」「二番茶」と呼称されますが、「番茶」については様々な定義があります。 一番茶と二番茶の間に摘まれた「番外のお茶」から転じた説や、三番茶や四番茶などのように遅く摘まれたことで「晩茶」と呼ばれて文字が転じた説などがあります。

茶葉の生育状況を調整するために、摘み取られる時期が中途半端だったり、遅かったりするため、大きさに差が生じ、特に決まった製法がないため、様々な部位が混在します。

西日本では煎茶の仕上げ工程で選別された大きな葉も番茶として使われることがあります。関西ではその葉が柳のような形をしていることから「青柳(あおやなぎ)」や「川柳(かわやなぎ)」とも呼ばれています。

番茶は、さっぱりとして苦みが少なく、カフェインによる刺激も少ないため、幼児や病人に向いています。また、浸出液の色は淡く、透明度が高いため、ペットボトルの原料としても多くりようされています。

様々な種類のお茶があり、それぞれ独自の特徴と味わいを持っています。

お茶の選択は個人の好みによるものですので、自分の好みや目的に合ったお茶を楽しんでいただければと思います。